分解整備記録簿とは?今の特定整備記録簿との違い・記載事項・保存期間2年
「分解整備記録簿」は、整備工場で長く使われてきた記録簿の呼び名です。2020年(令和2年)4月1日に改正道路運送車両法が施行され、分解整備と電子制御装置整備をまとめて「特定整備」と呼ぶようになったため、法令上の名前は特定整備記録簿に変わりました。
分解整備記録簿とは(要点)
- 今の法令上の名前は「特定整備記録簿」(道路運送車両法第91条)。分解整備をしたときもこれに記載する
- 「分解整備」という言葉は今も法令に残っていて、施行規則第3条第1号〜第7号の7種類の作業を指す
- 記載事項は登録番号・特定整備の概要・完了年月日・依頼者・総走行距離・整備主任者の氏名・認証番号など
- 保存期間は記載の日から2年間。使用者に写しを交付する義務がある
この記事では、分解整備記録簿と特定整備記録簿の関係、分解整備に当たる作業の範囲、記載事項の記入例、写しの交付と保存期間、ユーザーが自分で分解整備をした場合の記録の仕方を、道路運送車両法と施行規則の条文にもとづいて整理します。
整備工場の方へ ─ 記録簿の作成に1枚20〜30分かかっていませんか? システムで作る方法と印字サンプルはこちら ↓分解整備記録簿とは
分解整備記録簿は、認証工場(当時の自動車分解整備事業者)が、ブレーキやかじ取り装置などを取り外して整備したときに、その内容を書き残す記録簿でした。2020年4月1日の改正で事業の名前が「自動車特定整備事業」に、記録簿の名前が「特定整備記録簿」に変わり、対象となる作業に電子制御装置整備(カメラ・レーダーの調整など)が加わっています。
名前は変わりましたが、記録簿の役割は同じです。 工場が「どの車に、いつ、どんな分解整備をしたか」を残し、写しを使用者に渡します。現場では今でも「分解整備記録簿」「分解記録簿」と呼ぶことが多く、古い様式の用紙が残っている工場もあります。法令の記載事項を満たしていれば用紙の名前で違反になることはありませんが、新しく用紙を作るときは特定整備記録簿の記載事項に合わせておくと、電子制御装置整備をしたときにも同じ用紙で記録できます。
「分解整備」は今も法令上の言葉
特定整備に名前がまとまったあとも、「分解整備」という言葉は法令から消えていません。道路運送車両法施行規則第3条は、特定整備のうち第1号から第7号に当たるものを「分解整備」、第8号と第9号に当たるものを「電子制御装置整備」と定義しています。
| 区分 | 施行規則第3条 | 内容 |
|---|---|---|
| 分解整備 | 第1号〜第7号 | 原動機・動力伝達装置・走行装置・かじ取り装置・制動装置・緩衝装置・連結装置の決められた部品を取り外して行う整備又は改造 |
| 電子制御装置整備 | 第8号・第9号 | 前方を検知するセンサー(カメラ・レーダー等)の取り外し、取付位置・取付角度の変更、機能の調整など/自動運行装置の整備又は改造 |
名前が違うだけで、別の書類ではありません。「分解整備記録簿」は、今の制度でいえば特定整備記録簿のうち分解整備の記録にあたります。電子制御装置整備(エーミングなど)の記録の書き方は、特定整備の専門サイトの特定整備記録簿の書き方で解説しています。
分解整備に当たる作業(施行規則第3条第1号〜第7号)
判断の基準は部品名です。どの作業が分解整備に当たるかは、条文で部品名まで決まっています。取り外す部品によっては対象外になるものもあるため、記録簿を書く前に確認しておくと迷いません。
| 号 | 装置 | 取り外すと分解整備になる部品 | 条文で除かれているもの |
|---|---|---|---|
| 第1号 | 原動機 | 原動機(エンジン)本体の取り外し | ― |
| 第2号 | 動力伝達装置 | クラッチ、トランスミッション、プロペラ・シャフト、デファレンシャル、ドライブ・シャフト | 二輪の小型自動車のクラッチ |
| 第3号 | 走行装置 | フロント・アクスル、前輪独立懸架装置、リア・アクスル・シャフト | ストラット、二輪の小型自動車 |
| 第4号 | かじ取り装置 | ギヤ・ボックス、リンク装置の連結部、かじ取りホーク | ― |
| 第5号 | 制動装置 | マスタ・シリンダ、バルブ類、ホース、パイプ、倍力装置、ブレーキ・チャンバ、ブレーキ・ドラム、ディスク・ブレーキのキャリパ(二輪の小型自動車はブレーキ・ライニング交換のためのブレーキ・シューの取り外しを含む) | 二輪の小型自動車のブレーキ・ドラム |
| 第6号 | 緩衝装置 | シャシばね | コイルばね、トーションバー・スプリング |
| 第7号 | 連結装置 | けん引自動車・被けん引自動車の連結装置 | トレーラ・ヒッチ、ボール・カプラ |
たとえばブレーキ・パッドの交換でディスク・ブレーキのキャリパを取り外せば第5号に当たり、ブレーキ・ホースの交換も第5号です。リーフ・スプリング(シャシばね)の交換は第6号ですが、コイルばねは条文で除かれています。
分解整備記録簿(特定整備記録簿)の記載事項
特定整備記録簿に書く事項は、道路運送車両法第91条第1項と施行規則第62条の2で決まっています。分解整備をしたときも、この項目を記載します。
| 記載事項 | 根拠 | 記入例(架空) |
|---|---|---|
| 自動車登録番号(軽自動車は車両番号、その他は車台番号) | 法第91条第1項第1号 | ○○ 400 さ 56-78 |
| 特定整備の概要 | 同第2号 | フロント・ブレーキ・キャリパ左右取り外し、ブレーキ・パッド交換、ブレーキ液交換 |
| 特定整備を完了した年月日 | 同第3号 | 令和8年10月9日 |
| 依頼者の氏名又は名称及び住所 | 同第4号 | ○○ ○○(住所) |
| 特定整備時の総走行距離 | 施行規則第62条の2第1号 | 68,450 km |
| 整備主任者の氏名 | 同第2号 | ○○ ○○ |
| 自動車特定整備事業者の氏名又は名称、事業場の所在地、認証番号 | 同第3号 | ○○自動車整備工場(所在地)、認証番号 |
整備の概要は「ブレーキ整備」のように一言で済ませず、取り外した部品と交換した部品がわかるように書きます。どの号の分解整備に当たるかが読み取れると、監査や後日の問い合わせのときに説明しやすくなります。整備主任者の氏名は、点検整備記録簿では法令上の必須事項ではありませんが、特定整備記録簿では必須です。
写しの交付と保存期間は2年
自動車特定整備事業者は、記載した特定整備記録簿の写しを自動車の使用者に交付しなければなりません(法第91条第2項)。事業者側の記録簿は、記載の日から2年間保存します(同第3項)。
| 項目 | 分解整備記録簿(特定整備記録簿) | 点検整備記録簿 |
|---|---|---|
| 根拠 | 法第91条 | 法第49条 |
| 記載する人 | 自動車特定整備事業者(認証工場・指定工場) | 自動車の使用者(実務は依頼を受けた工場) |
| 作るとき | 特定整備(分解整備・電子制御装置整備)をしたとき | 定期点検・整備をしたとき |
| 保存期間 | 記載の日から2年間 | 1年または2年(点検基準第4条第2項) |
| 使用者への写しの交付 | 義務あり | 記録簿そのものを車に備え置く |
写しは電磁的方法で交付することもできますが、あらかじめ交付の方法を示して、使用者から書面または電磁的方法で承諾を得ることが条件です(国土交通省「点検整備記録簿、特定整備記録簿及び指定整備記録簿の電磁的方法による作成、保存又は交付に関する取扱い」)。保存期間の比較は点検整備記録簿の保存期間は1年?2年?にまとめています。
ユーザーが自分で分解整備をした場合の記録
自分の車のブレーキ・キャリパを外してパッドを替えるなど、使用者が自分で特定整備をした場合は、点検整備記録簿に整備の概要、整備を完了した年月日、総走行距離や実施者の氏名などを遅滞なく記載します(法第49条第2項)。
反対に、認証工場が特定整備をした場合は、使用者が点検整備記録簿に書く必要はありません(同項ただし書き)。工場が特定整備記録簿に記載し、その写しが使用者に交付されるためです。整備工場としては、写しを確実に渡し、車検証入れに一緒に保管してもらうよう案内しておくと、次の点検や車検のときに整備履歴をたどれます。
なお、他人の車の分解整備を仕事として請け負うには、地方運輸局長の認証(自動車特定整備事業の認証、法第78条)が必要です。
定期点検のときに分解整備をした場合
12ヶ月点検や24ヶ月点検のついでにブレーキ・パッドを交換するなど、定期点検と分解整備を同時に行うことはよくあります。この場合、点検整備記録簿には点検の結果と整備の概要(例:「フロント・ブレーキ・パッド交換」)を記入し、工場側では分解整備の内容を特定整備記録簿にも記載して写しを渡します。指定工場で車検を受け、同時に分解整備をした場合は、指定整備記録簿と特定整備記録簿の両方を作ることになります。
1台の入庫で記録簿が2種類、3種類と重なると、登録番号や走行距離を何度も書き写すことになり、転記ミスが起きやすくなります。点検整備記録簿の記入例は点検整備記録簿の記入例(図解)、指定整備記録簿は指定整備記録簿の記載例と書き方で確認できます。
分解整備記録簿の用紙・ダウンロード
法令(法第91条、施行規則第62条の2)が定めているのは記載する事項です。必要な事項が書かれていれば、振興会などで購入する複写式の用紙でも、パソコンで作ってコピー用紙に印刷したものでも記録簿として使えます。用紙の入手先は点検整備記録簿はどこで買う?、点検整備記録簿の様式の違いは点検整備記録簿の様式一覧|別表3〜7で解説しています。

記録簿作成システムで分解整備の記録をまとめる
指定整備記録簿作成システムは、指定車検・持ち込み車検・定期点検・分解整備の記録簿に対応しています。車検証の情報を一度入力すれば、点検整備記録簿と分解整備の記録で登録番号や走行距離を書き直す必要がありません。交換部品の名前は選んで入力でき、パターン化した整備内容は保存して次回から一括で反映できます。
手書きで1枚約25分かかっていた記録簿は、入力で最短5分になります。白紙のA3・A4コピー用紙に印刷でき、社内の保管はPDFで行えるため、2年間の保存と、問い合わせがあったときにすぐ取り出せる検索性を両立できます。
記録簿作成システムの画面(画面は見本)


整備工場・指定工場の方へ
指定整備記録簿を、白紙のコピー用紙に1枚最短5分で
手書きで1枚約25分かかる記録簿を、パソコンやタブレットの入力で最短5分に。車検証の内容から検査基準をシステムが判定し、記入漏れや基準値違反は警告で知らせます。
- 点検基準 別表3・4・5・6・7に全対応(指定車検・持ち込み車検・定期点検・分解整備)
- 白紙のA3・A4コピー用紙に印刷。複写式用紙とドットプリンターは不要、社内保管はPDFで
- 保安基準適合証・適合標章・点検ステッカーの日付も自動で計算
- スキャナーで車検証を読み取るOCR入力にも対応
- 一部の検査機器(テスター)との連動にも対応。詳しくはご相談ください
印字サンプルは、フォームに入力したメールアドレスへ自動返信でお届けします。

よくある質問(FAQ)
分解整備記録簿と特定整備記録簿は違うものですか?
2020年4月1日の道路運送車両法改正で、分解整備記録簿は特定整備記録簿に名前が変わりました。特定整備は分解整備と電子制御装置整備を合わせた呼び名なので、従来の分解整備をしたときも、今は特定整備記録簿に記載します。
分解整備とはどんな作業ですか?
道路運送車両法施行規則第3条第1号から第7号に当たる作業で、原動機、動力伝達装置、走行装置、かじ取り装置、制動装置、緩衝装置、連結装置の決められた部品を取り外して行う整備又は改造です。
分解整備記録簿(特定整備記録簿)の保存期間は何年ですか?
記載の日から2年間です(道路運送車両法第91条第3項)。事業者は使用者に記録簿の写しを交付する義務もあります(同第2項)。
分解整備記録簿には何を書きますか?
登録番号(または車両番号・車台番号)、特定整備の概要、特定整備を完了した年月日、依頼者の氏名又は名称及び住所、特定整備時の総走行距離、整備主任者の氏名、事業者の氏名又は名称・事業場の所在地・認証番号です(法第91条第1項、施行規則第62条の2)。
自分で分解整備をした場合も記録は必要ですか?
必要です。使用者が特定整備をしたときは、点検整備記録簿に整備の概要や整備を完了した年月日などを遅滞なく記載します(法第49条第2項)。認証工場が実施した場合は、工場が作る特定整備記録簿とその写しで記録が残るため、使用者の記載は不要です。
