点検整備記録簿とは?義務・記載事項・誰が書くのかを整備のプロが解説

点検整備記録簿は、自動車の定期点検を行ったときに「どこを点検し、どう整備したか」を記録して残しておく書類です。整備工場にとっては日常業務そのものであり、自家用車のオーナーにとっては愛車の整備履歴を証明する大切な記録でもあります。

この記事では、点検整備記録簿とは何か、法律上の位置づけ、記載事項、誰が書くのか、保存義務まで、道路運送車両法と自動車点検基準にもとづいて整理します。指定工場・認証工場で毎日記録簿を作成している方はもちろん、ユーザー車検を考えている方にも役立つ内容です。

点検整備記録簿とは何か

点検整備記録簿とは、道路運送車両法第49条にもとづき、自動車の定期点検整備を実施した際に、点検の結果と整備の概要を記録する書類のことです。国土交通省は点検整備記録簿を「点検の結果と整備の概要を記録、保存して、自動車の維持管理に役立てるためのもの」と説明しています。

現場では「記録簿」「整備記録簿」「定期点検整備記録簿」などと呼ばれることが多く、車検(継続検査)を受ける際に提示する書類としてもおなじみです。中古車の販売時に「記録簿あり」と表示されるのも、この点検整備記録簿を指しています。

なお、よく似た名前の書類に「特定整備記録簿」「指定整備記録簿」がありますが、これらは作成する主体も根拠条文も異なります。混同しやすいポイントなので、後半で整理します。

点検整備記録簿は義務なのか

定期点検整備そのものが道路運送車両法第48条で使用者に義務づけられており、その結果を記録する点検整備記録簿の作成・保存も第49条で義務とされています。つまり「点検を受けること」と「記録を残すこと」はセットの義務です。

ただし、罰則の運用や実務上の扱いは車両区分によって異なります。事業用自動車のように運行管理が厳格に求められる車両では、監査の対象として記録簿の整備状況が直接チェックされます。一方、自家用乗用車では、車検時に点検整備記録簿の提示がなくても検査自体は受けられるのが実情です。

しかし「提示しなくても車検が通る」ことと「義務がない」ことは別問題です。点検整備記録簿がなければ、法定点検を実施した証明ができません。整備工場側から見れば、記録簿は自社が適切に点検整備を行ったことを示す唯一の客観的な証拠になります。

点検整備記録簿には誰が記入するのか

法律上、点検整備記録簿の作成義務を負うのは自動車の使用者です。しかし実務では、使用者から点検整備の依頼を受けた整備工場が記録簿を作成するのが一般的です。

国土交通省の通達でも「自動車特定整備事業者も指定自動車整備事業者も点検整備記録簿の作成(記載)義務は負っていない。もっとも、自動車の使用者から依頼を受けて法第48条の点検又は整備をした場合、通常、自動車特定整備事業者又は指定自動車整備事業者が点検整備記録簿を作成する」とされており、依頼にもとづいて工場が作成する運用が前提になっています。

工場内で実際にペンを持つのは、認証工場であれば整備主任者、指定工場であれば自動車検査員や整備主任者であることが多いでしょう。ユーザー車検の場合は、使用者自身が点検を行い、自分で記入することになります。

点検整備記録簿の記載事項

自動車点検基準第4条により、点検整備記録簿には次のような事項を記載します。

  • 点検の年月日
  • 点検の結果(各点検項目について、良否や実施内容を記号で記入)
  • 整備の概要(交換した部品、調整した箇所など)
  • 整備を完了した年月日
  • 自動車登録番号または車両番号、車台番号
  • 自動車の走行距離
  • 点検整備を実施した者の氏名または名称・住所

点検の結果は、レ(点検の結果、異状なし)、×(交換)、△(修理)、A(調整)、T(締付)、C(清掃)、L(給油)、P(省略)、/(該当なし)といった記号を使って記入します。記号の意味は様式の欄外に凡例が印刷されているのが通常です。なお「×=不良」と誤解されがちですが、運輸局の記載要領上は交換を意味します。

点検整備記録簿の保存期間

保存期間は、その自動車が対象となる定期点検の周期によって決まります。

区分 主な対象車両 保存期間
3ヶ月・6ヶ月点検対象車 事業用バス・トラック・タクシー、自家用大型トラック、レンタカー(乗用車)など 1年間
1年(12ヶ月)点検対象車 自家用乗用車、軽自動車など 2年間

自家用乗用車の場合、記録した日から2年間の保存が必要になります。ちょうど次の車検までの期間にあたるため、車検証入れに記録簿を一緒に保管しておくのが実務的です。

点検整備記録簿・特定整備記録簿・指定整備記録簿の違い

名前が似ていて混同されやすい3つの記録簿を整理します。

記録簿 根拠条文 作成する主体 保存期間
点検整備記録簿 道路運送車両法 第49条 自動車の使用者(実務上は依頼を受けた工場) 1年または2年
特定整備記録簿 道路運送車両法 第91条 自動車特定整備事業者(認証工場) 2年間
指定整備記録簿 道路運送車両法 第94条の6 指定自動車整備事業者(指定工場) 2年間

ポイントは、点検整備記録簿が「使用者の記録」であるのに対し、特定整備記録簿と指定整備記録簿は「事業者の記録」だという点です。事業者側の記録簿は、監査で必ず確認される重要書類にあたります。

点検整備記録簿は電磁的記録でも保存できる

従来、点検整備記録簿は紙で作成・保存するのが前提でした。しかし現在は、国土交通省が示した「点検整備記録簿、特定整備記録簿及び指定整備記録簿の電磁的方法による作成、保存又は交付に関する取扱い」により、電磁的記録(電子データ)による作成・保存が認められています。

検索できる措置を講じること、更新履歴と作業者を自動的に記録すること、不正改ざんを防止すること、バックアップを行うことなど、システム側に求められる要件が定められています。

ただし注意点があります。運輸支局や軽自動車検査協会の窓口で検査を受ける際に点検整備記録簿を提示する場合は、書面(紙)で提示することとされています。電子化しても、車検の現場では印刷したものが必要になる場面が残るということです。

記録簿作成は「手書き」から「システム化」へ

1枚の記録簿を仕上げるのに20〜30分かかっているという工場は珍しくありません。車検証の内容を書き写し、レ点や斜線を記入し、基準値を電卓で計算し、交換部品名を手書きする。この作業がパターン化していても、毎回1から書き直す必要があるためです。

年間車検台数が700台の工場で、1台あたり20分短縮できれば、20分×700台=約233時間。1日8時間換算で年間およそ29日分の時間が生まれる計算になります。

記録簿は手書きである必要はありません。各項目と記載内容の要件を満たしていれば、プリンターからの印刷でも監査上まったく問題ありません。振興会指定の複写式用紙でなくても、A3・A4のコピー用紙への両面印刷で対応できます。

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よくある質問(FAQ)

点検整備記録簿とは何ですか?

道路運送車両法第49条にもとづき、自動車の定期点検整備を実施した際に点検の結果と整備の概要を記録する書類です。国土交通省は「点検の結果と整備の概要を記録、保存して、自動車の維持管理に役立てるためのもの」と説明しています。

点検整備記録簿は誰が書きますか?

法律上の作成義務は自動車の使用者にありますが、実務では使用者から点検整備の依頼を受けた整備工場が作成するのが一般的です。工場では整備主任者や自動車検査員が記入します。ユーザー車検の場合は使用者自身が記入します。

点検整備記録簿は義務ですか?

義務です。道路運送車両法第48条で定期点検整備が、第49条で記録簿の作成・保存が使用者に義務づけられています。ただし車検の際に提示がなくても検査自体は受けられるため、義務がないと誤解されることがあります。

点検整備記録簿は何年保存するのですか?

3ヶ月・6ヶ月点検の対象車は1年間、1年(12ヶ月)点検の対象車は2年間です。自家用乗用車は2年間となり、ちょうど次の車検までの期間にあたります。

点検整備記録簿は手書きでないといけませんか?

手書きである必要はありません。各項目と記載内容の要件を満たしていれば、プリンターからの印刷でも問題ありません。振興会指定の複写式用紙でなくても、A3・A4のコピー用紙への両面印刷で対応できます。

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