特定整備記録簿とは?分解整備記録簿との違い・保存義務・電子交付
2020年4月1日の改正道路運送車両法の施行により、それまでの「分解整備」は「特定整備」に再編されました。これにともない、分解整備記録簿も特定整備記録簿へと名称・内容が変わっています。
この記事では、特定整備記録簿とは何か、分解整備記録簿との違い、点検整備記録簿との違い、記載事項と保存義務、そして電子制御装置整備が加わったことによる実務への影響を整理します。
特定整備記録簿とは
特定整備記録簿は、自動車特定整備事業者(認証工場)が特定整備を行った際に作成する記録簿です。道路運送車両法第91条にもとづきます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠条文 | 道路運送車両法 第91条 |
| 作成主体 | 自動車特定整備事業者(認証工場・指定工場) |
| 保存期間 | 記載の日から2年間 |
| ユーザーへの交付 | 写しを交付する義務がある |
点検整備記録簿が「自動車の使用者の記録」であるのに対し、特定整備記録簿は「事業者の記録」です。監査で必ず確認される書類であり、記載漏れや保存漏れは行政処分の対象になり得ます。
分解整備から特定整備へ何が変わったのか
2020年4月1日の法改正で最も大きかったのは、法令に規定される整備の範囲が拡大した点です。
従来の分解整備(引き続き特定整備に含まれる)
- 原動機の分解
- 動力伝達装置(クラッチ、変速機、プロペラシャフト、デファレンシャルなど)の取り外し
- 走行装置(フロントアクスル、リヤアクスルなど)の取り外し
- かじ取り装置(ギヤボックス、ロッド、アームなど)の取り外し
- 制動装置(マスタシリンダ、ホイールシリンダ、ブレーキドラムなど)の取り外し
- 緩衝装置(シャシばね)の取り外し
- 連結装置の取り外し
新たに加わった電子制御装置整備
- 自動運行装置の整備・改造
- 運転支援装置に用いるカメラ・レーダー等の取り外しや位置・向きの調整(エーミング)
- これらの装置が取り付けられた前面ガラスの交換
- バンパーの脱着を伴うセンサーの調整 など
先進安全自動車(ASV)の普及にともない、衝突被害軽減ブレーキや車線逸脱警報などのセンサー調整が整備の対象として明確に位置づけられました。
経過措置は2024年3月31日で終了
2020年3月31日までに電子制御装置の整備を行ったことのある事業場については、2024年3月31日まで認証なしで電子制御装置整備を継続できる経過措置が設けられていました。
この経過措置はすでに終了しています。現在、電子制御装置整備の認証を受けていない事業場が該当作業を行えば未認証行為となります。認証を持たない指定工場は、当該作業に係る保安基準適合証を交付することもできません。
特定整備記録簿の記載事項
特定整備記録簿には、主に次の事項を記載します。
- 自動車登録番号または車両番号、車台番号
- 特定整備時の総走行距離
- 特定整備の年月日
- 特定整備の概要(実施した作業の内容、交換した部品など)
- 特定整備を実施した事業場の名称・所在地、認証番号
- 整備主任者の氏名
電子制御装置整備を行った場合は、どのセンサーに対してどの作業(取り外し、取り付け、エーミング等)を行ったかを具体的に記載します。運輸局の記載要領でも、カメラ・レーダーその他のセンサーの交換・修理・機能調整が作業例として明記されています。
3つの記録簿の違いを整理する
| 記録簿 | 根拠 | 作成主体 | 保存期間 | 作成のタイミング |
|---|---|---|---|---|
| 点検整備記録簿 | 法第49条 | 自動車の使用者(実務上は依頼を受けた工場) | 1年または2年 | 定期点検整備を実施したとき |
| 特定整備記録簿 | 法第91条 | 自動車特定整備事業者 | 2年間 | 特定整備を実施したとき |
| 指定整備記録簿 | 法第94条の6 | 指定自動車整備事業者 | 2年間 | 保安基準適合証を交付する検査を行ったとき |
実務では、1台の入庫に対して複数の記録簿を作成することがあります。たとえば指定工場で車検を受け、あわせてブレーキの分解整備を行った場合、指定整備記録簿と特定整備記録簿の両方が必要になります。
特定整備記録簿の写しは電磁的記録で交付できる
特定整備記録簿の写しはユーザーに交付する義務がありますが、現在は電磁的記録による交付も認められています。国土交通省が示す取扱いでは、次の方法が定められています。
- 事業者のスマートフォン等から使用者のスマートフォン等へ電子メール等で電子データを送信する方法
- 使用者が事業者の管理するウェブサイトやクラウド等にアクセスして電子データをダウンロードする方法
- 電子データを記録した電磁的記録媒体を受け渡す方法
ただし手続き上の条件があります。
- 交付した電子データは、使用者が出力して書面を作成できるようにすること
- あらかじめ使用者に対し、どの方法で交付する予定かを示し、書面または電磁的方法による承諾を得ること
- 承諾が得られなかった場合、または承諾後に撤回の申出があった場合は、電磁的記録により交付してはならないこと
- 使用者に対し、電子データの閲覧方法、映像面への表示方法、書面の作成方法を教示すること
「メールで送っておしまい」ではなく、事前の承諾取得と操作方法の説明までがセットになっている点に注意が必要です。
特定整備記録簿も電磁的記録で作成・保存できる
作成と保存についても電磁的記録が認められています。ただし整備記録システム側に次の措置が求められます。
- 電磁的記録を検索することができる措置を講じること
- 電磁的記録媒体に移行することができる措置を講じること
- 作成・保存・更新・消去の日時、更新箇所、作業者を自動的に記録・保存すること
- 保管場所を定めて施錠する等、不正改ざんを防止すること
- バックアップを行い、データ消失対策を行うこと
さらに、整備主任者に係る権限、記録簿に係る情報を起票・入力する権限について、IDとパスワードによる利用者登録・管理・認証機能を備えることが求められています。指定工場では自動車検査員に係る権限の管理も必要です。
記録簿の種類が増えるほどシステム化の効果が大きい
特定整備制度の開始により、認証工場が管理すべき記録簿と記載事項は確実に増えました。エーミング作業の記載、経過措置終了後の認証範囲の管理、2年間の保存と検索性の確保——手書きと紙のファイリングでは負担が積み上がる一方です。
指定整備記録簿作成システムは、指定車検・持ち込み車検・定期点検・分解整備に対応し、別表3・4・5・6・7に全対応しています。パターン化している内容は保存して一括反映でき、交換部品の名称は選ぶだけ。記入漏れや基準値違反はチェック機能が警告します。
社内保管はPDFデータで完結するため、2年間の保存と、問い合わせ時にすぐ取り出せる検索性の両立が可能になります。
記録簿の作成に1枚20〜30分かかっていませんか?
指定整備記録簿作成システムなら、パソコン・タブレットの入力で1枚あたり最短5分。車検証の内容から検査基準をシステムが判定し、記入漏れや基準値違反は警告でお知らせします。保適証・標章・点検ステッカーの日付も自動計算。白紙のA3・A4コピー用紙に両面印刷できるので、複写式用紙もドットプリンターも必要ありません。
よくある質問(FAQ)
特定整備記録簿とは何ですか?
自動車特定整備事業者(認証工場)が特定整備を行った際に作成する記録簿で、道路運送車両法第91条にもとづきます。記載の日から2年間の保存義務があり、写しをユーザーに交付する義務もあります。
分解整備と特定整備の違いは何ですか?
2020年4月1日の法改正で分解整備は特定整備に再編され、従来の分解整備に加えて電子制御装置整備が対象に加わりました。自動運行装置の整備・改造、運転支援装置のカメラ・レーダー等の取り外しや位置・向きの調整(エーミング)などが含まれます。
電子制御装置整備の経過措置はいつ終了しましたか?
2024年3月31日で終了しています。現在、認証を受けていない事業場が電子制御装置整備を行うと未認証行為となり、認証を持たない指定工場は当該作業に係る保安基準適合証を交付できません。
特定整備記録簿の写しはメールで送ってもよいですか?
電磁的記録による交付は認められていますが、あらかじめ使用者に交付方法を示して書面または電磁的方法による承諾を得る必要があります。承諾が得られない場合や撤回された場合は電子交付できません。閲覧・表示・書面作成の方法を教示することも求められます。
点検整備記録簿と特定整備記録簿はどう違いますか?
点検整備記録簿は法第49条にもとづく自動車の使用者の記録で、保存期間は1年または2年です。特定整備記録簿は法第91条にもとづく事業者の記録で、保存期間は2年間です。1台の入庫で両方を作成することもあります。
