整備記録簿の電子保存(電磁的記録保存)の要件|国交省の取扱いを解説

点検整備記録簿・特定整備記録簿・指定整備記録簿は、電磁的記録(電子データ)による作成・保存・交付が認められています。紙の複写式用紙とキャビネットでの保管から脱却できる制度的な裏付けができた、ということです。

ただし「PDFにしてフォルダに入れておけばよい」わけではありません。国土交通省が示す「点検整備記録簿、特定整備記録簿及び指定整備記録簿の電磁的方法による作成、保存又は交付に関する取扱い」には、システムと運用に対する具体的な要件が定められています。

この記事では、電子保存の要件を条項に沿って整理し、整備工場が何を準備すべきかを解説します。

対象となる記録簿と用語の定義

取扱いでは、次の3つをまとめて「点検整備記録簿等」と呼んでいます。

記録簿 根拠 作成主体
点検整備記録簿 法第49条第1項・第2項 自動車の使用者、または点検整備の依頼を受けた自動車特定整備事業者
特定整備記録簿 法第91条第1項 自動車特定整備事業者
指定整備記録簿 法第94条の6第1項 指定自動車整備事業者

また「整備記録システム」は、コンピュータ、端末機、通信関係装置、プリンタ、プログラム等の全部または一部により構成され、点検整備記録簿等の電磁的記録を作成・保存等するためのシステムと定義されています。

作成・保存の方法

作成(施行規則第6条)

書面の作成に代えて電磁的記録により作成する場合は、スマートフォン等の電子媒体に備えられたファイルに記録する方法、または電磁的記録媒体をもって調製する方法により作成します。

保存(施行規則第4条)

書面の保存に代えて電磁的記録により保存する場合は、次のいずれかの方法によります。

  1. 上記の方法をもって調製するファイルにより保存する方法
  2. 記録簿をスキャナ(これに準ずる画像読取装置を含む)により読み取ってできた電磁的記録を、スマートフォン等の電子媒体に備えられたファイルまたは電磁的記録媒体をもって調製するファイルにより保存する方法

つまり、最初から電子で作る方法だけでなく、紙をスキャンして保存する方法も認められています。

見読性の確保

いずれの場合も、記録簿を直ちに明瞭な状態で、スマートフォン等の電子媒体の映像面に表示および書面の作成ができる措置を講じる必要があります。

指定整備記録簿については、表示または作成されるものが指定自動車整備事業規則第10条の2に定める様式であることが求められます。データとして持っているだけでなく、様式に沿った形で出力できることが要件です。

整備記録システムに求められるガイドライン

事業者が電磁的記録により作成・保存する場合、次の措置を講じることとされています。

  • 検索性:点検整備記録簿等の電磁的記録を検索することができる措置を講じること
  • 可搬性:電磁的記録を電磁的記録媒体に移行することができる措置を講じること
  • 履歴管理:電磁的記録の作成、保存、更新および消去の日時、更新の場合は更新した箇所ならびにその作業者を自動的に記録し、保存する措置を講じること
  • 改ざん防止:ファイルまたは電磁的記録媒体は保管場所を定め、施錠する等して保管し、不正改ざんを防止すること
  • データ保全:バックアップを行うことによりデータの消失対策を行う等、安全性を確保すること

とくに履歴管理の要件が重要です。「いつ・誰が・どこを更新したか」を自動的に記録する仕組みが必要であり、これは単なるPDF保存では満たせません。

システムの安全対策

技術面

  • 次の権限についてID・パスワード等の利用者登録、管理および認証機能を有するものを導入する等により不正アクセスを防止すること
    • 自動車検査員に係る権限(指定自動車整備事業者に限る)
    • 整備主任者に係る権限
    • 点検整備記録簿等に係る情報を起票および入力する権限
  • 電磁的記録を保存する機器に直接接続された電子媒体が公衆回線とオンラインで接続される場合、アクセスするユーザー等の正当性を識別し認証する機能を有するものを導入する等の措置を講じること
  • 整備記録システムは、記載項目および入力権限についてエラーの検出機能を有するものを導入する等により、入力漏れおよび誤操作を防止すること

運用面

  • 管理責任者を定め、管理規程においてID・パスワードの付与および廃止の管理、電磁的記録媒体の使用・保管・搬出入・廃棄の管理を定めること
  • 非使用時には機能を停止させること、IDを複数者で共用しないこと、ID を付与された関係者以外が操作しないことを周知徹底し、不正アクセスを防止すること
  • 適切な使用方法に係る管理規程を定めて関係者に周知徹底し、操作マニュアルを備え付けること

【重要】車検の窓口では書面での提示が必要

電子化を検討するうえで、必ず押さえておくべき例外があります。

運輸支局、自動車検査登録事務所、または軽自動車検査協会の事務所もしくは支所において検査を受けようとするときに点検整備記録簿を提示する場合にあっては、書面の点検整備記録簿を提示することとされています。

つまり、社内では電子データで管理できても、車検の現場では印刷したものが必要になる場面が残ります。「完全ペーパーレス」にはならない点を理解しておく必要があります。

この意味で、普段は電子データで管理し、必要なときだけ白紙のコピー用紙に印刷できるという運用が、現行制度に最も適合した形になります。

使用者側の電子保存とクラウド

自動車の使用者が点検整備記録簿を電子保存する場合、「備え置き」の解釈が問題になります。国土交通省のQ&Aでは次のように示されています。

  • ファイル形式に決まりはない。ただし提示を求められた際に直ちに明瞭な状態で示せる必要がある
  • クラウド保存も「備え置き」に該当する。使用者が記録簿に係る情報を速やかに把握でき、提示を求められた際に直ちに明瞭な状態で示すことができる場合に限る
  • 携行するための電子媒体に決まりはない

「直ちに明瞭な状態で示す」に該当しない例

次の場合は要件を満たさず、点検整備未実施として取り扱われます

  • 電子媒体を携行しているが、故障、バッテリー切れ、電波の状況等、理由の如何を問わず直ちに映像面に表示できない場合
  • 電子媒体の操作に不慣れで、直ちに映像面に表示できない場合

「スマホの充電が切れていた」「操作方法がわからなかった」では通用しない、という点は現場で説明すべきポイントです。

特定整備記録簿の写しを電子交付する場合の手順

ユーザーへの交付を電磁的記録で行う場合、次の手順が必要です。

  1. 電子メール等での送信、ウェブサイト・クラウドからのダウンロード、電磁的記録媒体の受け渡しのいずれかの方法で交付する(施行規則第11条第1項)
  2. 交付した電子データは、使用者が出力することにより書面を作成できるようにする(同条第2項)
  3. あらかじめ使用者に対しどの方法で交付する予定かを示し、書面または電磁的方法による承諾を得る(施行規則第12条、政令第2条第1項)
  4. 承諾が得られなかった場合、または承諾後に撤回の申出があった場合は電磁的記録により交付してはならない(政令第2条第2項)
  5. 使用者に対し、閲覧方法、映像面への表示方法、書面の作成方法を教示する

承諾の取得と操作方法の説明までが事業者の義務です。運用フローに組み込んでおく必要があります。

現実的な進め方

制度上、記録簿の完全な電子化は可能になりました。しかし要件を整理すると、次の3点が揃っている必要があります。

  1. 記録簿を様式どおりに作成・表示・印刷できること
  2. 検索でき、更新履歴と作業者が自動記録されること
  3. 権限管理とバックアップが確保されていること

指定整備記録簿作成システムは、パソコン・タブレットで記録簿を作成し、白紙のA3・A4コピー用紙に印刷できます。社内保管はPDFデータで完結するため、車両ごと・日付ごとに探し出せる検索性を確保しつつ、車検の窓口で必要な書面もその場で出力できます。

紙の記録簿を2年分キャビネットに積み上げる運用から、必要なときだけ印刷する運用へ。制度の変化にあわせて、記録簿の管理方法を見直すタイミングに来ています。

記録簿の作成に1枚20〜30分かかっていませんか?

指定整備記録簿作成システムなら、パソコン・タブレットの入力で1枚あたり最短5分。車検証の内容から検査基準をシステムが判定し、記入漏れや基準値違反は警告でお知らせします。保適証・標章・点検ステッカーの日付も自動計算。白紙のA3・A4コピー用紙に両面印刷できるので、複写式用紙もドットプリンターも必要ありません。

▶ 指定整備記録簿作成システムの詳細・お問い合わせはこちら

よくある質問(FAQ)

点検整備記録簿は電子データで保存してよいですか?

認められています。最初から電子で作成する方法のほか、紙の記録簿をスキャナで読み取って保存する方法も認められています。ただし直ちに明瞭な状態で表示・印刷できる措置が必要です。

PDFをフォルダに保存しておけば要件を満たしますか?

満たしません。電磁的記録を検索できる措置、作成・保存・更新・消去の日時と更新箇所・作業者を自動的に記録する措置、不正改ざん防止、バックアップなどが求められます。

電子保存していれば車検の窓口でもデータを見せてよいですか?

いいえ。運輸支局、自動車検査登録事務所、軽自動車検査協会の事務所等で検査を受ける際に点検整備記録簿を提示する場合は、書面の点検整備記録簿を提示することとされています。

クラウドに保存するのは「備え置き」にあたりますか?

あたります。使用者が記録簿に係る情報を速やかに把握でき、地方運輸局長等から提示を求められた際に直ちに明瞭な状態で示すことができる場合には、法第49条第1項の備え置きに該当します。

スマホのバッテリー切れで記録簿を表示できない場合はどうなりますか?

理由の如何を問わず直ちに映像面に表示できない場合は「直ちに明瞭な状態で示すこと」に該当せず、点検整備未実施として取り扱われます。操作に不慣れで表示できない場合も同様です。

あわせて読みたい関連記事